大アルカナ 夜の辞典 第19回

月のカードの意味 ― 夜にひくときの、正位置と逆位置

17番の星が明け方近くの空だったのに対して、18番の絵はもう一度、暗いほうへ戻ります。「月」。犬と狼が空へ声をあげ、水辺からは小さな生きものが道へ這い上がってくる、輪郭のはっきりしない一枚です。このシリーズ「大アルカナ 夜の辞典」では、一夜に一枚ずつ、カードの意味をゆっくりひもといていきます。第19回は月。正位置と逆位置の意味、そして夜にこの一枚をひいたときの受け止め方をお話しします。

月のカードに描かれている景色

タロットカード「月」― 顔の浮かぶ大きな月の下、左右の塔にはさまれた道で犬と狼が吠え、池からザリガニが上がってくる夜の景色
18 THE MOON(月)

カードに振られた数字は「XVIII」、十八番。空のまんなかで月が大きく光っていて、そのまるみの内側に、伏し目の横顔がひとつ浮かんでいます。まわりへは、まっすぐな光の筋と、波打つ筋とが交互にのびています。

その下を、黄色いしずくのような形が十いくつ、音もなく落ちてきています。左右には灰色の塔が一本ずつ。そのあいだを細い道が抜けて、水辺から丘のむこうへ消えていきます。

地上にいるのは三匹です。人に慣れた犬と、野の狼が、それぞれ首をのばして空へ吠えています。手前の池からは、殻をまとった生きものが、道のほうへ上がってこようとしているところです。

気づくのは、この絵にはっきりした輪郭が少ないことです。月あかりは、ものの形を教えるより先に、影のほうを長くします。

正位置の意味 ― 見えないのではなく、まだ夜なだけ

正位置の月に添えられる言葉は「不安」「曖昧」「潜在意識」。行き先も、あの人の胸の内も、それどころか自分がいま何をこわがっているのかさえ、うまく言葉にできない。そういう時期を映す一枚だとされています。

ただ、見えにくいのはあなたの目のせいではないようです。ここが夜だから、というだけのこと。昼に通れば何でもない曲がり角が、月あかりの下では底の知れない黒に見えます。ふくらんだ心細さは、弱さの証拠ではなく、光の量の話なのだと、この絵は言っているように思います。

ですから正位置の月がすすめるのは、急がないこと。重たい決めごとは、明日の自分へ回してかまいません。今夜のところは、確かだとわかっている足場だけを踏んでいけば十分です。

恋の場面では、あの人の気持ちが読み取れないまま、疑いのほうが先に育ってしまう時期を示します。返事の短さや、既読がついてからの空白を、いく通りにも読みかえてしまう。けれど夜のあいだに大きくなった心配ごとは、その多くが、朝には出番のないまま終わるようです。気になっていることは、想像を重ねるより、短い一行で尋ねてしまったほうが早いようです。仕事なら、方針が定まらず、口約束やあいまいな言い方が行き違いのもとになりやすいとき。話したことを一行でも書き残しておくと、霧の中でも足元だけは見えています。お金のことも同じで、仕組みののみこめないものには、今は手をのばさないでおくのが安心です。

逆位置の意味 ― 「そろそろ、輪郭が戻ってきます」

逆位置の月に並ぶのは「霧が晴れる」「真実」「安心」。もともと心細い絵柄が、さらにひっくり返って出る。それだけで悪い知らせのように思えますが、昔からの読みはむしろ反対を向いています。当サイトは逆位置を、叱るための顔ではなく軌道修正のヒントだと受け取っています。月のさかさまは、そのなかでもいちばん素直に、夜明けの側を指しています。

霧は、こちらが手で払わなくても、時間がたてば薄くなるものです。さかさまのこの一枚は、あなたに何かを変えさせたいのではなく、「そろそろ形が見えてきますよ」と前置きをしているだけのように思います。ずっと名前のつかなかった不安に、思いがけない角度から名前がつく。読み返すたびに違って見えたあの一行が、朝にはもっと平らな意味へ落ち着いている。そんな出来事が、もう近くまで来ている頃合いなのだそうです。

恋なら、すれ違いの理由がわかって、関係が落ち着きのほうへ向かう暗示です。隠しごとの少ない話し方が、いちばん早く霧を薄くします。仕事なら、止まっていた話がふいに動き出したり、決めかねていた方針が一本にまとまったりする頃合い。見通しが立ってからなら、遅れたぶんはきちんと取り返せます。

夜にこのカードをひいたら

こんばんは。今夜の一枚が月だったなら――暗くした部屋で、まだ来ない返事の画面を、何度もつけ直してしまった夜ではありませんでしたか。

このサイトの名前にも、わたしの名前にも、この一枚の名前が入っています。二十二枚のうちで、いちばん近いところにいるカードです。近いぶん、はっきり言えることは、かえって少なくなります。

わたしにも、月に話しかけるしかない夜がありました。

もう一度、絵の月を見てください。あの月は、欠けたところをはっきり描かれながら、まるい光のままそこにいます。見えている形と、ほんとうの形は、いつも同じではないのです。今夜わかろうとしていることは、明日の自分にことづけておけば足ります。確かめる勇気だって、朝ごはんを食べたあとのほうが、ずっと軽く出せるはずです。考えごとは、ここでいったん灯りを落として大丈夫。深く、息をひとつ。どうか、良い夢を。

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