大アルカナ 夜の辞典 第20回

太陽のカードの意味 ― 夜にひくときの、正位置と逆位置

18番の月で、この辞典はいちばん暗いところまで来ました。19番でひらくのは、二十二枚のうちでただ一枚、まぎれもない昼の絵です。「太陽」。大きな光の下を、裸の子どもが白い馬に乗って進んでいきます。このシリーズ「大アルカナ 夜の辞典」では、一夜に一枚ずつ、カードの意味をゆっくりひもといていきます。第20回は太陽。正位置と逆位置の意味、そして夜にこの一枚をひいたときの受け止め方をお話しします。

太陽のカードに描かれている景色

タロットカード「太陽」― 顔のある大きな太陽の下、れんが塀とひまわりを背に、花冠をつけた裸の子どもが赤い旗を持って白い馬に乗る昼の景色
19 THE SUN(太陽)

カードに振られた数字は「XIX」、十九番。空のほとんどを、顔のある太陽が占めています。おだやかな、少しだけ眠たそうな表情です。そこからは、まっすぐな光の筋と、ゆらぎのある光の筋とが、交互に外へのびています。

その下には、灰色のれんが塀。むこう側でひまわりが四つ、こちらへ顔を向けて咲いています。塀の手前を、白い馬が一頭、急ぐでもなく歩いていきます。

馬の背にいるのは、小さな子どもです。頭に花の輪をのせ、身につけているものは何もありません。片手には、自分の背丈よりずっと大きな赤い旗。振り落とされまいと鞍にしがみつく様子もなく、腕をひらいたまま、まっすぐこちらを見ています。

気づくのは、この絵が何ひとつ隠していないことです。着るものも、うつむく理由も、この子はどれも持ち合わせていません。

正位置の意味 ― 隠さずに、喜んでいい

正位置の太陽に添えられる言葉は「成功」「生命力」「祝福」。積み上げてきたものが、誰の目にも見える形になっていく時期を映す一枚だとされています。

この絵がすすめているのは、うまくいったことを小さく言わないこと。「たまたまです」「わたしなんて」と先につけてしまう癖を、この一枚は静かにほどきます。裸のままの子どもが言おうとしているのは、飾らないままのあなたがいちばん頼もしいのだ、という古くからの読みです。

恋の場面では、明るさや健やかさがそのまま相手に届く時期。気持ちを隠さずに置いておくほど伝わりやすいようです。長く言えずにいた一言があるなら、まわりくどくしないで差し出すのに向いた頃合いだといえます。仕事なら、成果がきちんとあなたの名前つきで扱われるとき。人前で受け取ることに慣れていない方ほど、今回だけは遠慮なさらずに受け取ってください。お金の巡りも良いようです。うれしいことがあったら、ひとりで抱えこまずに誰かへ話してみませんか。分けたぶんだけ、喜びのほうは大きくなるものらしいです。

逆位置の意味 ― 「まだ、あなたの番が来ていないだけ」

逆位置の太陽に並ぶのは「曇り空」「自信不足」「延期」。いちばん明るいカードがひっくり返ると、良い話が立ち消えになる合図のように思えます。けれど当サイトは、逆位置を叱るための顔ではなく軌道修正のヒントだと受け取っています。この一枚のさかさまが指しているのも、空の光そのものが減ったことではなく、あいだに雲が一枚はさまっている、ただそれだけのようです。

心待ちにしていた予定が先へずれる。届くはずの返事が、まだ来ない。そこにあるのは、あなたの落ち度ではありません。力の問題ではなく、うつむく癖のほうが今は少しだけ強い――逆位置の太陽は、そう言っているだけに聞こえます。雲は、あなたが手で払わないうちに、勝手に位置を変えます。うまく笑えないままの一日を、そのとおりに閉じる夜があってもかまわないのです。

恋なら、自信のなさが一歩を止めている暗示。「自分なんて」とうつむくほど、せっかくの明るさが隠れてしまいます。背すじをのばして口角を上げる、それだけで届き方が変わるようです。仕事なら、発表や実現が後ろへずれる時期。取りやめの知らせではなく、仕上げに使える時間が増えたのだと受け取っておけば十分です。

夜にこのカードをひいたら

こんばんは。今夜の一枚が太陽だったなら――夜の辞典をめくる手元に、いちばん昼らしい絵が出たことになります。

この一枚は、ここではすこし場ちがいです。窓の外は暗く、明日の朝がどんな顔をしているのかも、まだわかりません。それでも、この絵は嘘をついてはいないのです。夜のあいだも、太陽そのものが失われはしません。ただ地球の裏側で、いま昼をしているだけ。見えていないことと、無いことは、ちがいます。

わたしにも、月に話しかけるしかない夜がありました。

それでも、絵の中のひまわりは、太陽のほうではなく、こちらを向いて咲いているのでした。今夜、光のあるほうを向けなかったとしても、それでよいのだと思います。

もう一度、絵の子どもを見てください。あの子は、あの光をこしらえた当人ではありません。巡ってきた朝の中に、たまたま居合わせているだけです。誰かの空が今あかるいのも、あなたのぶんがそちらへ移ったせいではないのです。空の光は早いもの勝ちではなく、めぐる順があるというだけのこと。よその空の明るさを数えるのは、今夜はやめておきませんか。灯りも、落としてしまって大丈夫です。あなたのぶんの朝も、飛ばされずにやってきます。深く、息をひとつ。どうか、良い夢を。

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